| 初折表 発句    霜枯れの野菊はみたり初日の出   (みどりこ) 
     
    脇      鳥めざめては明き福藁      (みお) 
    第三    凛々しくも馬に跨る武者ありて   (きこ) 
    四      眼差しひたと笑ふ山へと     (みお) 
    五(月)   風冴えて雪げに曇る春の月     (ひとし) 
    六(折端)  雛の灯入れし余呉の湖      (はる) 
    初折裏 
     
    初(裏移) カクテルの五彩を交はす杯は    (ひとし) 
    二      賑はふカジノ異国の酒店     (粋人) 
    三     長雨に語り明かしただけの縁    (安寿) 
    四      川明けの声いつか憾みに     (偶偶) 
    五     脛白き人も渡りぬ手に草履     (堂島屋) 
    六      砂掃き清め石庭を見る      (はる) 
    七     円かなる月こそ照らす小宇宙    (楽人) 
    八      スタビリチーを誇る団栗     (堂島屋) 
    九     目を回す猫の傍ら秋刀魚焼く     (楽人) 
    十      三行半にたたむ人生       (堂島屋) 
    十一(花) 花の闇五寸釘打つ音がして     (楽人)  
    十二(綴目)  穴を出し蛇あわてて戻る         
     (有)  
    名残表  
     
    初(折立) 雪解けの水青芝を直走り      (暁星)  
    二      靴が濡れても追う片想い     (楽人) 
    三     怺へかね無言電話をかけさうに   (鞠) 
    四      不採用とも言ってはこない    (楽人) 
    五     職安の窓より見ゆる銚子港     (ぽっぽ) 
    六      酢など落として鮑の肝で      (雲外) 
    七     新走したたる滴舌に受く      (重陽) 
    八      野分に軋む天井の下        (楽人)   
    九(月)  故郷の月針なして冷ゆるらん    (有) 
    十      くしやみ一閃だれがうわさを    (呆人)  
    十一    便りなき友などふいに思い出す   (妖一) 
    十二(折端) 打掛けの碁の劫もそのまま    (呆人) 
    名残裏 
    初     ふるさとに人落ち着かぬ青嵐    (愁吟) 
    二      特許を急かす時鳥鳴く      (楽人) 
    三      一夜城まぼろしの如現れて      (重陽) 
    四      荒れ地の春に舞いを奉納     (白菊)   
    五(花)  花屑の川面友禅あでやかに     (かおる) 
    挙句     糺の森の木の芽わきたつ     (重陽)   |